卵巣腫瘍体験記1――腫瘍が発見されるまで
こんにちは、ことり1号です。今日は体験記その1として、腫瘍が発見されるまでの状況というか、背景を書いていきたいと思います。
そもそもなんですけど、30cmの腫瘍って、大きいんですよ(当然)
卵巣がある下腹部から、みぞおちの上くらいまで腫瘍に侵食されていました。
こう聞くと皆さんこう思いますよね。
「なんでそんなになるまで気付かなかったの!?」
って。
というわけで、私がどういう人で、どういう状況にいたのかを含めながら病院にかかるまでを書いていきたいと思います。
~8月:新生活と生理不順
2017年4月、私は故郷青森を出まして、関東の大学の1年生となりました。第一志望の大学ということもあり、授業そのものへの期待は大きかったですが、内向的な性格である私にとって、人間関係を新しく築くことは、大きなストレスだったわけです。
そして、運の悪いことに、ちょうどこのころから生理周期が短くなりました。もともと27日周期くらいだったのが、22日周期になったわけです。当然、おかしいなとは思いましたが、「まあ、ストレスのせいだろう!」と考えていたわけです(しかし、術後の生理は26日間隔になっているので、ストレスというよりは腫瘍のせいだったのではないかと思っています、いまは)。生活リズムも乱れていたし、きっとそのせいだ、と思い込もうとしていたのかもしれません。
それから、このころから微妙に体重が増えていました。でも、まだスルー出来る範囲であったかな。
9~10月:バイトスタート、腹部膨張
夏休みに入ると、両親にせっつかれるようにバイトを始めました。居酒屋です。コミュ障が居酒屋です。無謀ですね。
(なんで両親がバイトするように言ってきたかというと、私が院進したいと言い出したからです。労働の楽しさを知れ、という親心です)
このころ、体重が4月時点より4㎏増えていました。それに伴い、おなかが固く膨れ上がってきました。これを私がどう捉えていたか、というと、「食生活の乱れかな!」です。一人暮らしって恐ろしいことに自由で、好きなものを好きなだけ食べられますから。
あと、夜のバイトだったから生活リズムも崩れてたし。で、バイトを続けて一か月、体調に異変が起こりました。生理が止まらなくなったんです。一か月くらい。ここで、職場で泣くくらい嫌で嫌で仕方なかったバイトをやめ、病院へ行くことを決意したわけです。
初めての婦人科
行くことに決めたのは、バスで一時間くらいのところにある婦人科です。大学近くにも婦人科はあったのですが、妊婦さんがメインの所は行きにくいし、評判の悪いところにも行きたくなく、候補から早々に外れました。このころ、おなかはカエルのように腫れあがり、「これはストレスじゃないかもしれない……」という恐怖に震えながらの診察でした。
ところが。行った先の婦人科では、老いた医師が一言、
「ホルモンバランスの乱れですね。なあに、1号さんくらいの年齢ではよくあることですよ。だから心配しないで」
といい、血液検査をして中用量ピルをだして終わりました。内診も何もなしです。私はこのとき、「いやいやおかしいだろう……」と思いつつも、腹部の腫れについては何も言えませんでした。先生が生理不順はよくあることだって言っているし、診てもらってただの肥満だったら恥ずかしい。私はすごすごと引き下がりました。ちなみに、血液検査で血を抜かれる時、私は泣きました。一人で婦人科に行くのも怖かったし、自分の身体から血が人為的に抜かれるというのも恐ろしかったからです。
(ちなみに、この後数えきれないくらい採血をして、慣れてしまいました)
妊婦に間違えられる
さて、中用量ピルをおとなしく飲んでみたは良いけれど、副作用に苦しむことになりました。朝の吐き気がひどく、ほとんど朝は食べられなくなりました。少なくとも午前中は吐き気に苦しみ、えづいていました。
ところで、うちの大学には一年次に必修体育があります。悲しいことに、うちの学部は木曜の一限に指定されていました。だから、当時朝ゼリー飲料だけ飲んで、息も絶え絶えになりながら体育館に通っていました。で、もうかなり目立つお腹、しかも吐き気をこらえている様子がある。そんな私にある日、体育の先生が電話をかけてきました。
「1号さん……もしかして妊娠してない?」
ショックでした。やっぱり、このお腹、目立つんだって。聞くと、後期の授業始まってすぐ(ピルを飲んでいない時期から)おかしいと思っていたようでした。先生には薬を飲んでいることを伝え、吐き気は副作用のせいだと伝えました。先生は安心した様子で、副作用がつらかったら見学でもいいということを言ってくれました。でも、他者から見ても私のお腹の膨れは異常なのだと知って、電話を切ってからトイレで一人泣きました。
ちなみに、のちに腫瘍が見つかってドクターストップがかかったとき、この先生は出席をレポートに替える措置をとり、評価も欠席をマイナスにしないという措置をとってくれました。感謝しかありません。
11月:腫瘍中心の生活・11.13事件
どんどん膨らんでいく正体不明のお腹に恐怖しながら暮らしていましたが、とうとう決着がつくときがやってきます。
保健管理センター
それは11月13日、月曜日のことです。
その前の金曜日、ものすごい腹痛がありました。耐えられないくらいの。でも、それは我慢していたら収まりましたが、土日は熱を出して寝込んでいました。月曜日、熱は収まったので一限の授業に出席しようとパンを食べた後、恐ろしいほどの吐き気に襲われ、寮のトイレに駆け込み、嘔吐しました。
「これは、ただ事ではない……!」
授業どころの話ではなく、腹痛の波をみて、痛みが穏やかになったところで、大学の保健管理センターへ駆け込みました。診療所みたいなところで、学生なら無料で附属病院の先生が診察してくれるのです。
(ちなみに、この時はまだ二限以降の授業に出る気はありました)
問診表には熱、腹痛と書きました。そのまま呼ばれるのを待ちます。十分ほど待って、私の番が来ました。
中に入るとお医者さんは、どの症状が一番つらいか、と尋ねてきたので私は腹痛です、と答えました。医者はベッドに横になるように指示しました。そして、私の膨れたお腹を見るなり、
「おっと……」
というつぶやきを漏らしました。この「おっと……」は一生忘れないかもしれません。保健管理センターはその特性上、軽症の患者しか来ません。たぶん、私も大したことがないと思っていたのでしょう。ところがどっこい、こいつは深刻だ……なんて内心では思っていたのでしょうね。そんな「おっと……」でした。
先生は腹部をポンポン、と叩くとエコーを取ることにしました。妊婦検診みたいに、エコーを取っていました。先生は無言で、看護師さんも無言でした。エコーのあと、レントゲンを撮り、またエコーしました。意味わからないですね。そしてエコーが終わると、事務の人が、「1号さん、今すぐ大学病院に行ってくれる?タクシーなら用意できるけど」と言ってきます。もう意味わかりません。私のお腹は異常、それはわかりますが、具体的に何が異常なのかも伝えないまま、先生は大学病院へ紹介状を書きました。私はお金を持ってなかったので学生支援の人に車を出してもらい、訳も分からぬまま大学病院へと連れていかれました。
大学病院
大学病院で通されたのは、緊急外来でした。ベッドに寝かせられると、お医者さんたちは腹部エコーをしながら血圧を測りながら血中酸素濃度と体温を測定し採血をして点滴を打ってきました。手際が良すぎです。なんというか、私が意識もうろうとしていて今にも死にそうならこの処理は適切なのでしょう。ですが、はっきりと自分の名前・実家の住所を言える容態の私には、ちょっと彼らの働きはオーバースペックでした。
可愛い系美人の若いお医者さんとその上司であろうイケメンは、真剣にエコーを見ながら話します。イケメン先生は、私に「隠していてもしょうがないからね、こうしてエコー見てたら貴女もわかるでしょうし。ここら辺に腫瘍があります」的な説明をしました。
まともな状況説明は、ここくらいのものでした。
改めて考えるとひどい話ですね。当事者の私にほぼほぼ説明がなく、医者の間だけで事が進んでいきます。その後、CTをとるかもしれないということで、私の親への連絡や各部署への連絡で先生たちは消え去り、私は放置されます。もう授業に出る気なんてありません。ぼーっとしていると、「左の卵巣に25cmの腫瘍が……」という不吉な台詞も聞こえてきました。私の母もかわいそうなものです。体調不良なのは電話していたので知っていたでしょうが、突然「大学病院に行くことになった」「腫瘍があるから今日CTを取るかもしれない、造影剤を使う同意をしてくれ」なんて電話がかかってくるんですからね……。
で、結局CTは取らない代わりに、婦人科外来へ行くことになりました。車椅子で連れて行ってもらいます(歩けたんですけどね)。このころには余裕も出てきて、ツイッターで「やべえwww大学病院なーうwww」みたいなこと呟いてました。
30分くらい待って、私の番が来ます。ひょろ長く気難しそうな先生(M先生)が、診察室に入るなりこう言いました。
「じゃあ、お尻の穴からエコー撮ります」
!?!?!?!?
私が性交経験ないから、そのための配慮なのでしょう。しかし、まさかケツからぶち込まれるとは思っていませんでした。痛かったです。すべての腐ったお姉さま方は「受け」のキャラに土下座しろと思うくらい痛かったです。
衝撃のエコーが終わると、その先生が言います。
「じゃあ、次回28日ね。その間にCTとMRIの検査を受けて。あと、今日はいろいろ検査していって」
以上!!
詳しい説明は、無し!!
もうわけのわからないまま採血→レントゲン→心電図のスタンプラリーを受けて終わりです。
さらに追い打ちをかけるように、会計に行ったら(お金は院内のATMでおろしました)
「1号さん、入院の手続きしていってくださいね」
初耳だよ!!
一言いえよM先生!!
訳の分からぬまま手続きをして、(日5万する個室にビビった)、この日は終わりです。M先生は脚色ではなくまじで何一つ病状を説明しませんでした。それにしても13日の情報量が多すぎです。私は13日を一つのターニングポイントだと思っています。
まとめ
- 大学進学と同時期から生理不順
- 夏休みにはお腹が膨れてくる
- 最初の病院では腫瘍がスルーされ、不適切な治療をされる
- 緊急外来は美男美女の先生ばかり、彼らを拝めるなら悔いなく死ねる
- M先生は何も説明してくれない
次回は
- MRI with 母上
- CT,そして帰省
- 恐怖!教授診察
の三本です。長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。